Last Updated on 2025 年 11 月 23 日 by 総合編集組
2025年タイ地震最新まとめ:バンコクの被害・救援状況・今後の課題
2025年3月28日に発生したミャンマーを震源とする強い地震は、震央から約1000km離れたタイ・バンコクにも大きな揺れをもたらし、東南アジア全域を衝撃に包んだ。震源はサガイン断層付近で、モーメントマグニチュード7.9と推定される浅発地震だったため、広範囲に強い揺れが伝播した。
バンコクでは高層ビルが激しく揺れ、市民が屋外へ避難する様子が見られた。特に深刻だったのは、チャトチャック市場周辺で建設中だった政府会計検査院の新庁舎(約30階建て)が倒壊した事故で、約80〜100名の作業員が瓦礫の下に取り残されたとみられ、犠牲者が急増している。この現場ではドローン、重機、レスキュー犬が投入され、72時間の「黄金の時間」をめぐる救助活動が続いているが、生存者確認は難しくなりつつある。
タイ全体の被害として、3月30日時点で 死者10~11名、負傷者16~26名、行方不明78~101名 が確認されている。数字だけ見ればミャンマーの甚大な被害(死者1600人以上)に比べ小規模だが、倒壊事故はタイ社会に大きな衝撃を与え、建設基準の遵守や施工品質への疑念が噴出している。特に土壌の軟弱性や低周波地震動による高層建築の共振が、被害増大の一因と指摘されている。
インフラ面では、BTSやMRTの運行一時停止、地下トンネルの浸水、高層ビルのガラス落下などが報告された。市当局は700棟以上の建物を対象に安全検査を実施しており、老朽建築の耐震性不足が今後の大きな懸念材料となっている。
政府は地震直後に緊急会議を開き、災害地域の指定、心理支援ホットラインの開設、救助隊の大規模派遣など迅速に対応。国王の哀悼声明と医療費支援も発表された。また、タイ工学会は台湾の専門家に協力を求め、国際的な技術支援の動きも広がっている。
余震も続いており、最も大きいもので規模6.4を記録。泰気象局によると、今後もM5以上の余震が発生する確率は約42%とされ、損傷した建築物の崩落リスクが高まっている。
専門家は、今回の地震が「バンコクの地震脆弱性を露呈させた」と指摘する。タイでは2007年以降、耐震基準が強化されたものの、多くの古い建築物は基準を満たしておらず、今後の再発時には甚大な被害が生じる可能性が高い。また、急速な都市開発や地下水の過剰汲み上げも地盤沈下・揺れの増幅につながると警告されている。
国際社会からは主にミャンマー向けの支援が進む一方、タイの被害も注目され、周辺国や国連が地震救援に関する連携を表明。台湾も技術協力の意向を示し、復興への期待が高まっている。
今回の地震は、震央がタイ国外であってもバンコクが強い揺れに見舞われる可能性を示し、都市の防災体制に大きな課題を突きつけた。今後は建築基準の徹底、老朽建物の補強、地震予警システムの強化に加え、災害後のメンタルケアなど、総合的な防災能力が問われることになる。